高圧実験と熱測定による地球内部物質の相転移および高圧結晶化学に関する研究

摘要

高温高圧実験で高精度に相平衡関係を決定することがまず重要であるが，地球内部の高温高圧下では化学平衡がはば成り立つので，熱力学を適用した相平衡関係の計算も活用できる。そのためには，相転移に伴うエンタルピー（熱量），エントロピー，熱容量（比熱）といった熱力学的諸量を知る必要がある。一成分系の高圧相平衡関係の熱力学計算の方法については，著者の解説［3］に概略が記されている。熱力学計算を適用することにより，高温高圧実験の結果が平衡に近いかを判定できる。さらに，高温高圧実験と熱力学計算を組み合わせることによって，それぞれ単独の場合よりも，精度の高い相平衡関係を決めることができる。本稿では，マントル構成鉱物および類縁無機化合物の高圧相転移に関して，高圧実驗と熱測定·熱力学計算の両面から，主に著者とそのグループの研究を歴史的にたどりながら，この分野の進展を紹介したい。