原油高騰の本当の被害者は②コストを転嫁できない石油会社

摘要

原油高騰の影響緩和策として、備蓄原油の放出による原油価格引下げ効果、さらには民間備蓄の石油を市場価格で売却して簿価と市場価格の差益を国民に還元するという極端な意見さえもある。 しかし、原油備蓄は戦争発生などの物理的な供給途絶が発生した場合にのみ放出することが原則であり、市場価格が高騰しているという理由をもって、備蓄を放出するなら、市場メカニズムに対する政府の過剰な介入によって最適資源配分が損なわれる可能性がある。 原油価格の高騰はあくまでも市場の需給逼迫（それは、単に実需としての需給逼迫だけではなく、投機目的の仮需の逼迫も含めての話であるが）によるのであり、その解決は市場で実施すべきである。 また、石油会社の石油備蓄を市場価格で売却して、簿価との差額を広く国民に還元すべきであるといっても、石油精製·元売企業の場合には、常に在庫している原油の払い出しと時価による原油の受入を行っていることから、簿価の洗い替えが発生し、原油価格上昇局面では総平均法を適用して、期初の安い原油が在庫の平均単価を押し下げるといっても、在庫に新しい高値の原油が次々と流入することから、簿価はそれほど低くはなく、実際に市場価格で原油を販売しても大きな差益は発生しない。