認めて任せて褒めて伸ばせ

摘要

産業界で人材育成というと、知識の習得が主眼になりがちで、近年は知識偏重にさらに拍車がかかっているように思えます。 しかし、知識というものはちょっと勉強すれば得られるものです。 難しいのは人間の心を育てることです。 倫理観や人間としての徳目、人生の知恵を身に付けた人こそ、社会から必要とされ、人の幸せに貢献できる。 だから私は、入社式でも新入社員に「立派な社員になれ」とは言いません。 「人として立派になれ。 そのための経験を伊藤忠で積みなさい」と話します。 私は1998年に伊藤忠商事の社長になり、翌年約4000億円の特別損失を処理しました。 経営の立て直しを行うに当たって、部長全員と面談して、仕事に対するビジョンや夢を聞きました。 これから改革に取り組むに当たって、核となるべきミドルの社員をよく知ること、そして私を後継する次世代の経営トップを掘り起こすことが目的でした。