高レベル放射性廃棄物地層処分における地下水·熱水--岩石相互作用の重要性

摘要

本論文で述べたことを以下のようにまとめることができる．高レベル放射性廃棄物地層処分の安全性評価は，シミュレーション（性能評価）とナチュラルアナログ研究によってなされる．わが国における地層処分の安全性評価のための重要なシナリオとして，熱水シナリオと隆起·浸食シナリオ（浅層シナリオ）があげられる．それらのナチュラルアナログ研究の例として，黒鉱鉱床地域の熱水変質，土壌（黒ボク土，ローム土）中での元素移動に関する研究例を示した．特に，REEの地球化学的挙動（二次生成物（粘土鉱物，水酸化鉄，マンガン酸化物など）への固定化）を明らかにした．これより，二次生成物が多く含まれる岩石と水との反応において，REEおよびこの化学的類似元素であるAm，Cmは，長期間（数1，000年以上）では，それほど移動されないことが示唆された．Am，Cmの化学的類似元素であるLREEの移動度は，堆積岩起源土壌（沖縄赤黄色土）の方が火山灰起源土壌（黒ボク土，ローム土）よりも小さい．この相違は，LREEの二次鉱物への固定化メカニズム，二次鉱物の種類の違いによると思われる．これらの研究により，鉱床学の従来の研究手法（鉱物の同定，鉱物，岩石の化学分取同位体分析，熱力学，溶液化学など）を高レベル放射性廃棄物処分問題へ適用することが可能であるといえ，今後さらに適用事例が多くなることが期待される．謝辞：黒鉱鉱床地域のボーリング試料は，歌田突先生，桧久幸敬氏により採取 治觯ㄣk物，酸素同位体）されたものであり，これら試料の分析を快く許可していただいた両氏に感謝敦します．また，土壌のICPMS分析は，産業技術総合研究所の装置を使わせていただいた．ICPMS分析の御指導をしていただいた野原正人氏に感謝致します．