軽希土類元素に富むカーボナタイト鉱床：米国，マウンテンパス鉱床

摘要

本報告では，カーボナタイトに関連する希土類鉱床として，アメリカ合衆国のマウンテンパス鉱床についてその特徴を既存文献に基づき概観した．このタイプの鉱床は一般にバストネサイトなどの炭酸塩鉱物に伴われ，La，Ce，Ndなどの軽希土類元素に富むことを特徴とする．本鉱床の関連火成岩であるアルカリ若紫は高カリウム岩として定義できる岩相を待つ一方で，シリカに富む珪長安岩相やカーボナタイトを伴い，軽希土類類元素に富むといった化学成分の特性も含めて，アルカリ岩類の中でも特異な岩体として位置づけられる．中国のバイヤンオポ鉱床などもまた，マウンテンパス鉱床と同様に軽希土類元素に富むアルカリ岩関連の鉱床である．特にバイヤンオボ鉱床ほ2004年の生産量ベースで世界の約50％もの酸化希土肇を生産する巨大鉱床である（第6図）．このようをアルカリ岩類に富む軽希土類鉱床にも，微量ながら童希土類元素が含まれており，マウンテンパス鉱床の酸化重希土類総鉱量は膨大である．しかしながら，現状では重希土類資源の世界生産の大半は，中国南部に分布する一部のイオン吸着型鉱床産の原料に依存しており，軽希土類を主体とする鉱床（中国のバイユンオボ鉱床や四川省）などからの童希土類に富む原料の供給は約10％とされ（Karayannopoulos，2004），非常に少ない．マウンテンパス鉱床は現在休眠状態であるが，2007年に計画されている操業再開が現実のものとをれば，世界の希土類生産量に大きく寄与するであろう．マウンテンパス鉱床などの軽希土類元素に富む大規模·高品位鉱床から低含有量の重希土類元素を回収するため，安価で環境負荷の少ないプロセスの開発が今後も重要な研究課題となると推察される．したがって，近い将来に高度先端産業界が求める童希土類需要の高まりに十分対応するためには，短期的には大規模鉱量の軽希土類元素に富む鉱床から重希土類資源を供給すること，中長期的には重希土類に富む鉱床の発見·開発が必要不可欠である．