X線回折および赤外分光法による生分解性ポリマーの結晶性と熱的挙動に関する研究

摘要

筆者らは以下の4つの根拠に基づきC-H…O相互作用がPHBおよびP（HB－co－HHx）中には存在すると考えている．i）C－H…Oの距離がvan der Waals半径の和より短い，ii）C-H伸縮振動が異常な高波数に観測される，iii）PHBのモデル化合物のダイマーの量子化学計算の結果がC－H…O相互作用の存在を示唆する，iv）X級回折の温度変化の結果がa軸方向に相互作用のあることを示唆する．図13にPHBとその共重合体の結晶構造が温度の上昇とともに崩れていく模式図を示す．PHBでは温度の上昇とともにC－H…O水素結合が徐々に切れていくが，らせん構造そのものは崩れずに保っている．さらに温度が上昇すると，融点近傍で急にらせん構造が崩れる．一方，共重合体では，アモルファス部分がPHBに比べると多いために，形成されるC－H…O水素結合の数もPHBと比べると少ないだろう．温度が上昇とともにC－H…O水素結合が切れ始めるが，アモルファス部分の熱運動の影響を受けるために，融点よりもかなり低い温度から結晶構造そのものも崩れていくと考えられる．