スピネル型LiMn_2O_4の不規則構造とLiの拡散

摘要

スピネル系結晶中のLiの拡散は，Liの本来の位置である8a席と，6個の酸素に人面体的に取り囲まれた空の16c席を利用した単純なホッピング機構であろうと思われてきた。 しかし実際はもっと複雑で，Liの拡散路には8aおよび16c近傍に多くの安定な位置があり, 従来考えられてきた対称性の高い8aや16c席にはあまり滞留しない。 Liの拡散にはLiを取り囲む酸素四面体の変形が必要である。X線を使って観測された酸素原子の空間的分布は，時間の重みをつけて平均化されたこの変形の痕跡である。 MDの立場から見ると，酸素原子の位置の乱れは，まずMn~(III)とMn~(IV)の分布状態によってその初期状態が与えられ，時間の経緯に伴うMnの酸化数の変化によって主として変調される。