NADH/NAD~+類縁体の酸化還元反応における希土類イオンの電子移動触媒作用

摘要

補酵素NADH/NAD~+はアルコール脱水素酵素の働きで生体内電子伝達を司り、その近傍には亜鉛イオンが存在しているが、金属イオンの効果については未だ明らかにされていない。通常 AD~+類縁体を還元するためには金属水素化物錯体をどの強い還元剤を必要とする。 我々はこれまでに種々のカルボニル化合物の還元反応において金属イオン、中でもスカンジウムイオン（Sc~（3+））が電子受容体ラジカルアニオン種と錯体を形成して安定化することで、電子移動触媒として効率良く働くことを見出している。 本研究では、NAD~+類縁体である1-ベンジルニコチンアミジニウムイオン（BNA~+）および、4-アセチル-N,N-ジイソプロピル-1-ベンジルニコチンアミジニウムイオン（ABNA~+)の電子移動還元がSc~（3＋）共存下で可能となることを見出したので、その触媒作用機構について検討し、反応中間体の検出を行った。一方、我々はNADH類縁体によるパラベンゾキノン類や酸素分子のヒドリド移動還元反応においても、希土類イオンが電子移動触媒として作用することを見出している。 本研究では、NADH類縁体である10-メチル-9,10-ジヒドロアクリジン（AcrH_2）による3，6-ジフェニル-1，2，4，5-テトラジン（Ph_2Tz）のヒドリド移動還元反応におけるSc~(3＋)の触媒作用機構についても検討した。