メチルフエニデートの精神神経系に及ぼす影響

摘要

要約：メチルフヱニデート（MPH: methylphenidate)は，過眠症の1つであるナルコレプシ一や，発達障害の1 つである注意欠如多動性障害（AD/HD: attention-deficil/hyperactivity disorder)の治療薬として広く用いられている.MPHは，メタンフユタミンなどと同様に強い覚醒作用を持つことから，ナルコレプシ一の治療効果のメカ二ズムは理解しやすい.これに対して，MPHがAD/HDの治療に役立つメ力二ズムはほとんどわかっていない. MPHを健常者が摂取すると覚醒·興奮して多動になるのに対して，AD/HD患者では逆に鎮静効果が現れる. MPHは主にドパミントランスポーター（DAT)とノルェピネフリントランスポーター（NET)を標的とする. この標的の1つであるDATを欠損させた（DAT-KO)マウスが有望なAD/HDモデル動物として注目されている. MPHは，AD/HD患者と同様にDAT-KOマウスにおいても，多動を抑制し，不注意を改善させ，意欲を高める. DAT-KOマウスの解析により，MPHのAD/HD治療効果のメカニズムが解明される可能性が考えられる.