腫瘤形成性慢性膵炎と膵癌との鑑別-血流評価を含めた画像解析とそのスコア化-

摘要

腫癌との鑑別を要した腫瘤形成性膵炎10例の臨床および各種画像診節(ERCP,Dynamic CT)における特徴を,特に腫瘤の血流評価を中心に膵癌切除例46例と比較検討し,その鑑別診断のため画像所見のスコア化を試みた。 今回の検討により, Dynamic CTによる腫瘤の血流評価のみで,腫瘤形成性膵炎と膵癌を鑑別することには限界があると思われ,成因も加味した他の検査法を組み合わせた総合的診断が必要であると考えられた。 成因が非アルコール性でDynamic CTの早期動脈相において腫瘤が周囲膵組織と等吸収城,腫瘤以外の膵外尾部で膵の腫大を認める症例,または成因がアルコール性で画像上腫瘤が膵管または胆管を巻き込んでいるにも関わらず膵管·胆管の両者に所見を認めない症例は腫瘤形成性膵炎の可能性を考慮に入れる必要があると考えられた。 今回作成した画像所見のスコア化により,負のスコアが腫瘤形成性膵炎,正のスコアが膵癌をより示唆するものと考えられ,鑑別診断に有用と考えられた。