糸球体菲薄基底膜（Thin basementmembrane TBM）の電子顕微鏡定量的研究一特に菲薄基底膜症（Thin basement membrane disease）と菲薄基底膜を伴う他疾患との差について一

摘要

血尿を主体とする尿異常を有し，腎生検が実施されても明らかな腎炎所見のない症例で，電顕的に糸球体基底膜の菲薄が見出され菲薄基底膜症thin basement membranedisease（以下TBMDと略す）と呼ばれる疾患がある。 一方IgA腎症にも部分的に基底膜の菲薄化が見出されており，血尿との関係が示唆されている。 今回著者は菲薄基底膜症2例，光学顕微鏡的（光顕）には腎炎所見が軽微でIgMが優位に沈着している（仮にIgM腎症とよぶ）2例およびIgA腎症1例の計5例について広範囲の基底膜の厚さを計測し，その程度，分布，範囲について比較検討を試みたので報告する。