心腎連関からみた糖尿病治療

摘要

心血管疾患から腎機能障害が起こる，あるいは 腎疾患から心血管疾患が起こるといった心腎連関 が臨床現場で注目を浴びている。この概念は病態 そのものも重要であるが，循環器専門医や腎臓専 門医がおのおのの専門とする臓器のみを診療する のではなく，おのおのの臓器から個々の全身への 影響にも着目し適切な治療を施す必要性があると いう意味合いで，教育的な要素も盛り込まれた画 期的な概念である。一方，両者の病態には，今や 国民病ともいわれている糖尿病が関与するケース も多く，心腎連関を克服するためには，その中心 に糖尿病に取り組む医師の存在，およびその考え 方も重要になりつつある。最近，糖尿病治療は日 進月歩の発展を遂げ，新たなわかりやすい糖尿病 治療アルゴリズムの画策が期待されるも，臨床現 場においては選択する薬剤が増えた分，結果的に 治療薬選択に苦慮しているのが現状である。本稿 では心腎連関と糖尿病の関連を最初に説明し，糖 尿病の病態を背景にした悪しき心腎連関を防止するための治療薬に関して，血圧，脂質，血糖の3つの角度からアプローチする方法で論ずる。