スキルス胃癌と鑑別を要する非腫瘍性疾患膵炎の胃への波及を認めた症例

摘要

膵臓は胃の背側に接して存在するため，同部の炎症や腫瘍が胃の伸展不良を惹起することがある.なかでも，膵体部から尾部にいたる広範な膵炎は，胃に波及する範囲が広く，スキルス胃癌との鑑別が問題となる.鑑別にはX線所見が重要であり，膵炎では胃の背側から波及するため胃後壁大彎側の軽度の伸展不良にとどまること，管外性炎症であるため体位変換で伸展不良の程度が変化すること，胃壁外の石灰化を伴う場合が多いこと，などに着目すべきと思われる.臨床像から膵炎の波及を疑い，腹部超音波やCTを積極的に活用すべきことは言うまでもない.