右上同名1/4盲と漢字に著明な失読失書を示した左側頭葉後下部梗塞の1例

摘要

背景：失読失書は通常，角回障害で生じるが，角回障害を伴わない側頭葉後下部の梗塞で失読失書を経験した.症例：82歳，右利き男性.読字障害を主訴に受診. 初診時視力は右0.7(矯正不能)，左0.7(矯正不能).視野検査で右上同名1/4盲を認め，標準失語症検査で呼称障害と漢字に著明な失読失書を示した.磁気共鳴画像法にて左側頭葉，後頭葉の後大脳動脈領域に梗塞巣を認めた.脳血流シンチグラフィ一にて左の下側頭回，海馬傍回，紡錘状回，舌状回，下後頭回で血流の低下を認めた.角回には画像および脳血流に明らかな異常を認めなかった.結論：漢字に代表される表意文字の読み書きには， 角回のみならず側頭葉後下部および後頭葉内側部などの視覚関連皮質が関与していることが推測された.