アトピー性皮膚炎患者に対する塩酸オロバタジンの有効性および安全性の検討

摘要

顔面·頸部に難治性紅斑を示すアトピー催皮膚炎(以下AD)患者39例を対象に,第2世代抗ヒスタミン薬である塩酸オロバタジンとタクロリムス軟膏の併用(以下,オロバタジン併用群)あるいはタクロリムス軟膏単独(以下,タクロリムス軟膏単独群)で3週以上治療し,その有効性と安全性を評価した。具体的には,そう痔の程度と皮膚所見の推移から治療効果を評価することとした。なお,そう痔の程度には白取らの分類を,皮膚所見はAD治療ガイドラインの重症度分類を用い,症状なし(0)最重症(4)の5段階にスコア化して詳細に評価した。顔面·頸部のそう痒スコアはオロパタジン併用群(31例)で観察日3月±0.6,1週目1.5±1.2と有意(p<0.01)に低下した.一方,タクロリムス軟膏単独群8例のそう痔スコアは観察日2.0±0.5,1週目1.5±0.8であり,有意な低下は認めなかった。 また,オロバタジン併用群の患者日誌によるかゆみスコアからは日中のかゆみが観察日2.6±0.6から3日目1.9±0.9,7日目0.8±1.0,14日目0.8±0.8へと推移し,さらに,夜間のかゆみも観察日の2.2±0.9から3日目1.2±0.8,7日目0.7±0.9,14日目0.6±0.9へとスコアの低下が示された。 このかゆみスコアの低下は,投与3日目から有意差(p<0.05)を認め,患者日誌を用いた調査の最終日まで(投与開始時より14日間)良好に推移した。 投与1過日の全般改善度を比較すると,オロパタジン併用群で「改善」以上52.2%,「やや改善」以上95.7%,タクロリムス軟膏単独群では「改善」以上33.4%, 「やや改善」以上83.3%であり,オロバタジン併用群でより高い改善率を示した。一方,副作用は39例中オロバタジン併用群の4例に軽度の眠気や全身倦怠感が出現したが,血液検査,尿検査も含め,重篤な副作用は認められなかった。 そう痒·皮膚所見ともにオロバタジン併用群は優れた改善率を示し,そう痒·皮膚所見の改善と相関して,タクロリムス軟膏の皮膚刺激感も減少した。 以上より,オロパタジンが顔面·頸部に難治性の紅斑を呈するAD患者に対して,高い有効性とともに速効性を示すことおよび安全な薬剤であることが確認された。