SIRSに伴うALI/ARDSに対するシベレスタットナトリウム水和物の使用経験

摘要

好中球エラスターゼ限害薬であるシベレスタットナトリウムは,SIRSに伴うALI/ARDSに対する新しい治療薬である。 当院外科で2002年8月から2003年1月までに経験したSIRSに伴うALI/ARDS症例のうち,シベレスタットナトリウムを投与した10例に関し検討,報告する。年齢は67.9±4.6歳(平均±標準誤差, ALI/ARDSの発症原因は,「誤嚥性肺炎」3例,「重症肺炎」3例,「間質性肺炎急性増悪」2例,「敗血症」1例,「エンドトキシン血症」1例であった。 シベレスタットナトリウムの投与量は,全症例で4.8mg/kg/day,ALI/ARDS発症から投与開始までの平均日数は0.6±0.3日,平均投与期間は7.6±1.5日であった。 投与開始前の平均P/F比は126.4±20.5mmHg,投与終了後の平均P/F比は216.0±34.6mmHgでp<0.05の有意差をもって上昇し,他の肺機能所見も改善傾向にあった。 10例中2例が死亡したが,ALI/ARDSの増悪による死亡は1例であった。 今回の経験より,SIRSに伴うALI/ARDSに対し早期にシベレスタットナトリウムを使用することによって,呼吸状態の改善,救命に寄与すると思われた。