肺癌の分類におけるマイクロアレイによる遺伝子発現プロファイル

摘要

cDNAマイクロアレイ解析が登場してきてから,生物の全体像が解明されるのではないかという大きな期待がある.全ゲノムが解読され,個々の遺伝子の機能が次第に分かってくると,全発現遺伝子を網羅的に解析して,そのパターンから生物学を論ずることができるようになるかもしれない.腫瘍の分類においてもマイクロアレイヘの期待は大きい.というのは,もともと病理診断というのは,腫瘍全体を見て診断するものであるからだ.本稿では,肺癌の分類にかかわる近年の研究をいくつか紹介する.4大組織型がマイクロアレイ解析でも再現され,種々のものが含まれる腺癌については,いくつかの亜型が見出された.その中には,これまでの病理組織学では見出せなかった,予後と密接に関連するものも含まれる.今後は,フィードバック機能との関係から,遺伝子発現と蛋白発現とを結びつける方向へ研究は進んで行くであろう.特に転写因子に関しては,このことは重要である.