血管炎のゲノミクス

摘要

血管炎は,複数の遺伝子が同義的に作用して発症する,また環境の影響を受けやすいとするポリジーン疾患である.この個々のポリジーンは多型遺伝子として集団内に潜在的に分布し,ゲノム交雑によるこれらの偶発的組合せが,血管炎の発症のみならず,他の膠原病の合併の有無や血管炎の組織分布などの多様性をも規定していると考えられる.一般に疾病の発症は遺伝要因と環境要因の組合せに規定されるが,遺伝要因は大きく2つに分けうる.ひとつは,その疾病が単一遺伝子の欠落あるいは変異により直接的あるいは間接的に特定の遺伝子の機能的異常を誘導する結果発症する場合であり,他のひとつは,疾病の発症が,かりに変異遺伝子が関与するとしてもそれのみでは誘導されず,補足遺伝子や遺伝子多型を含めた複数の遺伝子を必要とする,生物学上のいわゆるポリジーン遺伝の概念(Mather,1949)にあてはまる疾患(ポリジーン系疾患)である.