甲状腺疾患におけるアポトーシスの役割

摘要

甲状腺疾患は甲状腺腫が原因でみつかることが多い．ヨード欠乏性甲状腺腫，臓器特異的自己免疫疾患のBasedow病，橋本病,腫瘍性病変として甲状腺癌など，その病因もさまざまであるが，どの疾患にもアポトーシスが関与している.甲状腺濾胞細胞には正常でFasLが発現しており，Fasを発現した活性化リンパ球はアポトーシスに陥り浸潤 増殖しにくい．つまり甲状腺組織ば"免疫特権部位"と考えられる．Basedow病では濾胞が増殖し甲状腺腫を呈するが,甲状腺刺激ホルモン（TSH）受容体抗体やサイトカインによりアポトーシス抵抗性になっていると考えられる．橋本病ではリンパ球などの細胞浸潤と濾胞の破壊が起こるが，濾胞細胞どうしでアポトーシスを誘導したり，浸潤リンパ球により濾胞細胞にアポトーシスが誘導されると考えられている，甲状腺癌においてはアポトーシスの機構を利用した新しい治療の開発が試みられている．