心臓微小循環

摘要

心筋はつねに酸素化された十分な血液が供給されなければ,ただちに収縮障害を生じ不可逆的な変化(壊死)がもたらされる.冠循環は,刻一刻と変化する心筋の酸素消費量にみあう血流を供給できるようにきわめて精緻に調節されている.これまで狭心症や心筋虚血は大きな冠動脈の狭窄や攣縮によるものを中心に病態が理解されてきた.とこるが近年,冠動脈造影で観察されない冠微小循環について多くの研究がなされている.その機能異常である冠血流予備能低下と微小血管攣縮が,微小血管狭心症,高血圧心,不全心(拡張型心筋症)などのさまざまな病態において重要な役割を果たしていることが明らかになってきた,さらには冠動脈硬化症による狭心症や冠攣縮性狭心症などにおいても,冠微小循環障害が虚血の発生に深く関与していることが示唆されている,その異常を是正するためにさまざまな試みがなされており,ACE阻害薬やスタチンなどが冠微小循環改善に成果をあげつつある.