活性酸素と高血圧-NAD(P)Hオキシダーゼの役割を中心として-

摘要

活性酸素種(reactive oxygen species : ROS)は元来好中球や貪食細胞などから大量に産生し,殺菌作用を示すものと考えられていた.しかし, ROSは単に細胞障害作用を引き起こすだけでなく,血管平滑筋細胞,内皮細胞および心筋細胞などの多くの細胞において,さまざまな刺激(ストレス,増殖因子受容体およびG蛋白質結合型受容体の活性化)によって細胞内に少量産生され,シグナル伝達因子として重要な役割を果たしていることが明らかになってきた.これまでに,虚血再海流障害や心筋梗塞,高血圧,動脈硬化,糖尿病,心筋症,心不全など多くの循環器系疾患の病態にROSが関与することが示唆されている.本稿においてはとくに血管壁におけるROSのおもな産生源であるNAD(P)Hオキシダーゼについて,さらにROSを介した細胞内シグナル伝達機序および高血圧とのかかわりを中心に概説したい.