眠りの分子機構

摘要

健康な生活に睡眠は不可欠であり，ヒトは人生の約1/3を眠ってすごす．しかし，睡眠調節の分子機構は長年にわたり不明であった．約25年前に，京都大学の早石修教授（現：大阪バイオサイエンス研究所理事長）のチームによりプロスタグランジン（PG）D2の脳室内投与が強力な睡眠を誘発することが発見され，以来，この物質を用いて睡眠覚醒調節に関する情報伝達系がつぎつぎと明らかにされた．とくに，最近10年間はさまざまな遺伝子欠損（knockout：KO）マウメを用いた研究が活発に行われ，著しい成果をあげている．以下に，その成果の一部を紹介する．