漢方薬による薬物性腎障害　誤った漢方薬使用で末期腎不全や癌が起こる

摘要

わが国で広く用いられている漢方薬であるが，漢方薬といえども副作用と無縁ではない．甘草（カンゾウ〉を含む漢方薬では偽アルドステロン症を発症する可能性があり,添付文書に明記されている．また，アリストロキア酸が混入した漢方薬を使用することで，末期腎不全や尿路系腫瘍が国内外で起こっている．アリストロキア酸腎症（aristolochic acid nephropathy,海外ではChinese herbs nephropathyと表されることが多い）は発症機序が解明されておらず，進行を阻止する有効な治療法が確立されていない．アリストロキア酸腎症では腎間質の広範な線維化が特徴的で，アリストロキア酸摂取中止後も腎機能は悪化する．アリストロキア酸は国内で医薬品として承認されている生薬および漢方薬には含有されていない．しかし，個人使用目的に持ち込まれた薬剤·健康食晶にはアリストロキア酸が含まれている可能性があり，注意が必要である．