DHEAの臨床応用への展望-インスリン抵抗性解除と長寿への関与

摘要

副腎皮質網状層から分泌される副腎アンドロゲンであるdehydroepiandrosterone（DHEA）は加齢とともに低下するので，動脈硬化や肥満，糖尿病との関連が示唆されていたが，その本態は不明である.着者らは脂肪細胞を使用して，DHEA単独が糖の取込みを促進するという驚くべき事実を見出し，この機序がphosphatidyli nositol3－kinaseとその下流に存在するatypicalPKCの活性化によることを明らかにした．一方,最近加リ-制限と血中DHEA濃度および寿命との関係を調査した論文も発表され，にわかにDHEAとインスリン抵抗性や長寿との関連の研究が注目され，それのみならず，DHEAの肥満や糖尿病に対する治療への応用の可能性も模索されている．実際，著者らは糖尿病モデル動物や成人男性に対してDHEAの経口投与によるインスリン感受性の改善をみている．一方，日本での長寿地域での血中DHEA－SuIfate（DHEA－S）の濃度や生活習慣の疫学的調査により，さらなるDHEAの謎に迫ることが可能と考えている.