DNA二重らせん構造の半世紀収納DNAの分子構造

摘要

現在，生化学者が試験管内で取り扱っている単離DNAは，ほとんどみなB－DNAだといってよいであろう．B－DNAは，広く出回っている模型のとおり，ピッチ34?に10ヌクレオチド残基をもつらせん2本が，互いに向きを逆にしてからみあい，AT，GCの塩基対面がらせん軸に直角に3.4?の間隔を置いて積み重なった構造のものをいう．この構造のアイディアは，J．WatsonとF．Crickとのすばらしい洞察力の賜物（1953）であるが，実験に基づく原子座標はM．Wilkinsらによって1960年に初めて与えられた．その後，S．Arnottの芸術的ともいえる見事なⅩ線繊維写真などによって，原子座標の改良が行なわれ，DNAのカノニカル構造ともいえるものが出来上がっている．次いで1980年代初頭から，R．E．DickersonのドデカマーをはじめとするDNAオリゴマーDNA単結晶のⅩ線構造解析が始まり，同じB－DNAでも局所構造の詳細には多様性があることが知られてきている．B－DNAオリゴマーの精密構造解析は今もまだ続いている［たとえばTereshko，V.et al．：J．Am．Chem．Soc．，121，470（1999）］．