DNA二重らせん構造の半世紀ヒトゲノム解読とワトソン博士

摘要

分子生物学（molecularbiology）の輝かしい成果のひとっは，DNA→RNA→蛋白質という遺伝情報の伝達経路が確立されたことである．このいわゆるセントラルドグマ（複製?転写?翻訳）の確立に，J．D?ワトソンとF.H.C．クリックによるDNA二重らせん構造の発見が決定的な頁献をした．20世紀最大の発見といわれるゆえんである．これら2人の天才分子生物学者が，あの美しいDNA二重らせん構造モデルを提唱したのは1953年のことであり，その数年後にノーベル賞が授与された．私は当時，名古屋大学に入学したばかりで，この発見を伝え聞き，科学研究という世界の素晴らしさを知った．遺伝子DNAの二重らせん構造が，複製という生物の最も根源的な現象を明快に説明し，それが化学や物理の法則と技術を駆使して解析され提唱されたという事実に，強く感動したことを懐かしく思い出す．