DNA二重らせん構造の半世紀 DNAからゲノムへ，そしてゲノム人間学へ

摘要

今日の生命科学の隆盛は，20世紀後半期の分子生物学の発展なしには考えられない．そしてその分子生物学の原点は，言うまでもなくDNA二重らせんの発見にある．そのシンプルな構造の中に，このように複雑で多様な生物を生み出す力が担われているとは真に驚きであり，生命の歴史35億年の中でそれを生み出してきだ"偉大な力"の存在を感じさせる．このDNAに刻まれた情報を解き明かすことこそが，生命理解への最重要課題であることは言うまでもない．この生命情報の解読へ向けて，（分子）生物学はこの50年間，驚異的な発展を遂げてきた．そしてその"驚異の発展"の象徴的成果ともいうべき「ヒトゲノムの全配列決定」が，この50年目の節目の年に達成される（2003年4月）．「ヒトゲノム討画」に深くかかわってきた私にとっては，正直言って二重らせん発見の50周年よりも，ヒトゲノム全配列決定を（国際チームの一月として）成しえたという達成感と安心感，そこから湧き出る喜びのほうがはるかに大きい．