HIVの複製を阻止する

摘要

われわれの生体内の細胞はウイルスを細胞内で増殖させないようにする機構を有しているが，HIVはその制御機構を巧みにすり抜ける術をもっている．その手段のひとつがHIVゲノムによってコードされるVif（viral infectivity factor）である．Vif蛋白質はHIVや他のレトロウイルスの複製を阻害する細胞内因子APOBEC3G（apolipoprotein B mRNA editing enzyme，catalytic polypeptide-like 3G，CEM15ともよばれる）を阻害することが知られている．つまり，HIVは自らがコードするVif蛋白質によって，宿主側の細胞による防御機構であるAPOBEC3Gを阻害することにより，細胞内での自らの複製を可能にしている．これを逆に考えると，このあたりのメカニズムを明らかにすれば，HIVの複製を阻止することができるということである．そのようななか，今回このAPOBEC3GがどのようにしてHIVの複製を阻止しているのかが明らかにされた．