第65回日本東洋医学会学術総会開催にあたつて

摘要

漢方医学の恩師のお一人であります松田邦夫先生が、　本誌に以下のような考えを述べておられる。「医学の対象は本来人間であるのに、現代ではややもすると医師と　患者との精神的関係が途切れて、医療技術ならびに薬剤　による治療手段のみが求められ、人間不在の医学が発展　する傾向がある。漢方もまた例外ではなくなりつつあ　る。この時期にあたって、漢方医学は漢方本来の形を回　復する使命があり、移精変気の法は現代において再考さ　れるべき漢方の領域であると思われる」(『漢方の臨床』　52.：36-375)と。EBM確立こそが漢方医学の進む道で　あると声高に叫ばれるよ、つになつて、何となく違、つので　はと私自身感じていた。先生のこの一文は、私の危惧していた具体的内容を示してくださった。