臨床心理士からのコミュニケ一シヨン·アドバイス一こころとからだの声を聴く一

摘要

不定愁訴の患者の話を丁寧に聴くことは，時間と忍耐力を要するため，曰常の診療の中において余裕をもって行うことは，なかなか難しい.しかし，患者の話をしつかりと聴き，良好な治療関係をつくることが，不定愁訴の治療にとって肝要と思われる.本稿では，臨床心理士の経験や事例紹介をもとに，患者の話を聴くコッについて述べる.患者の話を受容的に聴き，患者像を捉え，症状により訴えているものが何であるか，すなわち患者にとっての症状の意味を知ろうとすることが重要である. また，患者の話を聴くことで治療者に生じてくる感情状態を吟味することにより，心因性であることの判別が可能となることを述べた.心因性である場合には，患者との良好な治療関係を基盤にすることにより，精神科ゃ心療内科，あるいは臨床心理士への紹介をよりスムーズに進めるだけでなく，精神療法的な治療効果をも生じ得ることを論じた.