桂枝湯を含む分心気飲についての一考察 桂皮の作用と正気の鼓舞

摘要

漢方治療では、患者のもつ複雑な病態に対し、単一の薬方のみで直線的に治癒に至ることはむしろ稀で、あらかじめ何らかの手法をとる場合や、いくつかの段階を踏みながら、やがて根本治療に至ることがある。この一連の治療の経緯で、いわば棋譜のようなものが暗黙裏に存在するために、次に打つ手を探ることができるのではないかと筆者は考えている。W年ほど前の症例であるが、漢方薬を投薬する時機とその手順について、検討するきつかけとなった症例を報告し、考察を加える。