滑膜幹細胞を用いた関節骨再生

摘要

軟骨組織は細胞密度が低く，血行を欠くことから，再生能力が低い.そのため，軟骨欠損部に対して細胞成分を補うことが，再生させるための手段の1つになる.細胞源として間葉幹細胞は， 軟骨組織を犠牲にせず，自分の細胞を使用でき，多数の細胞を確保できる点で有用である.骨髄液， 滑膜，骨膜，皮下脂肪，筋肉から同一条件で間葉幹細胞を採取し比較すると，骨髄液と滑膜由来のものが軟骨分化能が高い.さらに滑膜由来のものは，自己血清を用いて優れた増殖を示すことから軟骨再生の細胞源として有用である.滑膜間葉幹細胞の浮遊液を軟骨欠損部に10分間静置すると約60%の細胞が接着し，軟骨修復を促進させることが実験的に示されている.これまでの基礎研究の成果を基にして，滑膜間葉幹細胞を関節鏡視下で移植する軟骨再生医療を開始している.重篤な副作用を認めず,多数の例で軟骨欠損部の再生,症状の改善を認めている.