十二指腸壁内血腫による通過障害を契機に診断した groove膵癌の1例

摘要

非外傷性十二指腸壁内血腫を契機に診断したgroove膵癌の1例を経験した.患者は60歳代，男性.悪心と腹痛を主訴に受診し，腹部造影CTで十二指腸下行脚壁内に5 cm大の血腫を認めた.保存的に加療し症状は改善したが, 42病日の造影CTで,groove領域に3 cm大の早期相で造影効果に乏しく ，後期相で濃染する腫瘤を認めた.ERCPでは脬管への浸潤はなく，胆管の圧排所見を認めた.Groove膵癌の疑いと診断し，亜全胃温存塍頭十二指腸切除術を施行した.病理組織診断はgroove腾癌であったが，血腫周囲に炎症所見および腫瘍浸潤はなかった.両疾患間に直接的な因果関係は証明できなかったが，十二指腸壁内血腫の形成にgroove膵癌が何らかの関与をしている可能性が示唆された.