イノベーションと医療安全

摘要

海外の学会に参加するたびに新しい人工臓器が臨床の現 場に登場し，その臨床使用成績が議論される。その数は半 端なものではなく，特に私の専門とする循環器領域におい ては，新しい循環補助装置，人工弁（特にカテーテルを用 いた経皮デバイス）の開発は非常に盛んで，それが臨床試 験に進むのも，はたから見るとあっという間にみえる。もつ とも，当時者にしてみれば多くの困難と手続きを乗り越え てきていると反論されるに違いないが。以前から指摘され ていることであるが，そのような場で日本初のデバイスの 結果が報告されることは極めてまれである。いくつかのわ が国発の補助循環装置が，日本での臨床治験を経て海外で の臨床試験に進んでいるのは素晴らしいことであるが，ま だその数は極めて少ない。人工弁や経皮デバイスに至って は皆無といってもよい。