Sheehan症候群の経過観察中にバセドウ病を発症した一例

摘要

Sheehan症候群とは，分娩時の大出血や循環 ショックにより下垂体の梗塞性壊死を来たし，そ の結果，下垂体前葉機能低下症をきたす病態で ある。よってSheehan症候群では二次性甲状腺 機能は低下症を呈することが通例である。一方， Sheehan症候群の発症時に，無痛性甲状腺炎に よる一過性の甲状腺機能亢進症を発症する場合が あることも知られている。今回，私たちは，Sheehan 症候群の発症時に，一過性甲状腺機能亢進症 を来たし，その後，二次性甲状腺機能低下症とな り，甲状腺ホルモン補充療法を行っていた症例で バセドウ病の発症を認めた。Sheehan症候群の経 過途上におけるバセドウ病の発症は稀であり，臨 床経過上，興味ある一例と考えられたので，文献 的考察を加え報告する。