漢方薬と杭がん剤誘発神経障害オキサリブラチンによる末梢神経障害に対する 牛車腎気丸の効果に関する基礎的ェビデンス

摘要

大腸がん治療に汎用されるォキサリブラチンは， 末梢神経障害を高頻度で発現し，その進行が治療の変 更ゃ中止に繋がることから，臨床上問題となっている. しかしながら有効な予防?治療法は確立されていない. 牛車腎気丸は，腰痛，しびれなどの症状に用いられる漢方薬であり，近年ォキサリブラチンによる末梢神経 障害に有効であることが臨床研究において報告されて いる.しかし，その効果や作用メカニズム，ォキサリ ブラチンの抗腫瘍効果への影響などの基礎研究はほと んど行われていなかった.そこで，著者らはォキサリ ブラチン誘発末梢神経障害に対する牛車腎気丸の作用 について検討を行い，牛車腎気丸がォキサリブラチン による急性の冷感過敏に対して予防や改善効果を，遅 発性の機械的ァロディニァに対して症状緩和作用を有 することを見出した.さらに，牛車腎気丸の効果には，血管内皮細胞のnitric oxide synthase (NOS)活性の増 加による血流量の増加とそれに伴う皮膚温の上昇が関 与することも示唆された.また，牛車腎気丸はォキサ リブラチンの抗腫瘍効果に対して影響しなかったこと から，基礎研究においてもォキサリブラチンによる末 梢神経障害に有用である可能性が示唆された.しかし ながら，効果を得るためには高用量が必要であること や慢性神経障害である機械的ァロディニァの発現に対 して予防効果がみられなかったことから，今後さらに 基礎研究や臨床試験を推進し，確かなェビデンスを構 築することが重要である.