膵移植患者とQOL

摘要

膵移植とは，1型糖尿病患者を対象にして，脳死あるいは心停止ドナーからの全膵移植，または生体ドナーからの膵体尾部移植を行い，適正なインスリン分泌によって糖代謝を正常化し，二次性合併症の進展阻止，quality of life（QOL）の改善，さらには救命，延命効果を期待する治療法であり，欧米では糖尿病に対する治療法のひとつとして定着している。 国際膵臓移植登録によると，膵臓移植の2004年末までの累積症例数は23，043例に達し，2000年以降は年間約1，800例が全世界で行われている。 日本でも，膵臓移植中央調整委貞会の尽力によって膵移植の登録から移植手術までを全国支援体制で行えるようになり，1997年10月の臓器移植法制定後2008年6月現在，1型糖尿病で腎不全を合併した患者に対して，脳死ドナーから47例，心停止ドナーから2例の計49例の膵腎同時移植，腎移植後膵移植，膵単独移植が施行されている。