思春期の自殺企図症例に対する精神科と他科との連携：高度救命救急センターにおける臨床心理士の役割

摘要

思春期の自殺企図症例への介入には，成人とは違った難しさがある。なぜなら，精神医学的評価や病態水準の査定だけでなく，発達水準や自我の査定が必要であり，介入対象は家族，学校，地域福祉，医療機関など多岐にわたるためである。そして，適切な環境調整がその後の成長を大きく左右するためである。そのため，自殺企図にて救急医療施設に搬送された際には，精神科医，救急医，看護師，臨床心理士，精神保健福祉士などの他職種が協同して介入を行うことが求められる。そして，各々が専門性を活かして迅速かつ的確な介入を行う必要がある。臨床心理士としては，各種検査を用いた人格構造，発達水準，社会機能の査定，そして心理面接技能を用いた本人や家族への治療的介入を専門的役割として危機介入を行うことができると考えられる。また，本人の身体的，心理的，発達的段階に合わせて適切な社会資源を提供していく役割を担うことも必要である。