大うつ病性障害を呈したアスペルガ一障害の青年期症例

摘要

DSM－Ⅳ TRのような操作的診断概念において表現される大うつ病性障害には，比較的幅広い病態が含まれると思われるが，非定型的と捉えられる症候や経過をとる症例の中には，発達障害を基礎とした大うつ病性障害も少なくないと考えられる。 しかしながら，一部の疫学的研究を除いて，「うつ」の症候形成と発達障害の関係についての研究はまだ少ないのが現状と思われる。 そこでわれわれは，高機能な自閉症の障害を基礎に大うつ病性障害を呈した症例に関して，その症候形成のプロセスと患者の認知機能障害の関係について研究を行っている。 今回，われわれはこうした青年期症例において，日記指導を含めた認知行動療法的治療を施行し，その治療経過に関して精神病理学的検討を行った。 その結果，自閉症の障害の持つ認知特性が，思春期から青年期にかけての自意識の形成の過程で，「うつ」という症候形成に関わっている可能性が示唆されたので報告したい。