肺炎球菌尿中抗原迅速検出キットの市中肺炎における有用性の検討

摘要

最近米国で認可されたimmunochromatographic membrane assayによる肺炎球菌尿中抗原迅速検出キットNOW Streptococcus pneumoniae (Binax lnc.,USA)の有用性について,国内の成人市中肺炎症例66名を対象に検討を行った.全体として22名(33.3%)の患者尿で尿中抗原が検出され,22名中6名(27.3%)から喀痰または血液の培養で肺炎球菌が分離された.抗原陽性例22名のうち8名では,喀痰培養·血液培養のいずれからも肺炎球菌は分離されなかった.尿中抗原陽性群と陰性群の比較では,両群の肺炎の重症度については有意な差を認めなかったものの,陽性例では陰性例と比較して着意に血中CRP値の上昇を認めた.しかし腎機能·尿所見を含め他の検査所見·症状については両群で明らかな差は認められなかった.今回の検討によって,喀痰培養など通常の検査では原因菌不明と判断された患者の中にも,肺炎球菌抗原の陽性例が多数存在することが判明し,肺炎球菌はこれまで考えられていた以上に市中肺炎の起因菌として重要な菌であると推測された.また,このキットは特別な設備や技術が不要で,患者の随時尿から15分で抗原を検出できる特長を有することから,市中肺炎の原因菌の迅速診断法として有用な検査法と考えられた.