放射線の散歩道［188］高松塚古墳の壁画の顔料

摘要

高松塚古墳は奈良県の明日香村という古墳群の集まっている地域で発見された。天皇や貴人の墓になっている前方後円墳はどれも大型で昔からよく知られているが、この高松塚古墳は小高い盛土が見えるだけで、その上が竹やぶになっている小さな古墳である。七世紀後半から八世紀初頭にかけての期間にできた古墳と思われ、南北二·六五五メートル、東西一·〇三五メートル、高さ一二三四メートルという極めて小さい石室の内部には、壁面と天井に美しい色どりの絵画が描かれていて、日本の歴史的な絵画の中で重要な地位を占めるものと考えられている。それ故、昭和四七年（一九七二年）の高松塚発見以来、数多くの調査研究がなされてきた。