エミリー·デュ·シャトレの『火の論文』（1744）異本について

摘要

デュ·シャトレ夫人の生前に出された最後の著作，1744年版『火の本性と伝播についての論文』（以後『火の論文』と略す）には，様々な異本があることが判明した．きっかけは，この本ついて『本誌』に掲載した拙論に関して，そこに画像を提供してくれたアメリカの古書コレクターであるスメルツァーとさらなる議論をしていた時のことである．途中で議論がかみ合わなくなった．はじめは「私の英語力が低いからか」とも思ったが，そういう問題ではなく，お互いの持っていたテキストが異なっていることが判明した．なんとデュ·シャトレが1744年に出版した『火の論文』には，少なくとも3種類の異本があることがわかったのである．