地中熱利用のための広域における地下水流動と熱輸送解析

摘要

本稿では，広域における地中熱利用の研究について，地質学や地下水学の視点から捉えた研究例について紹介した．欧米諸国で普及した地中熱利用システムは，システムが採排熱を行う地質構造や地下水の賦存状況が日本とは大きく異なる場合が多い．したがって，我が国の地下環境を利活用したシステム設計により，システムの高度化や普及·促進が図れると思われる．また，地域ごとの地中熱の利用可能性（地中熱ポテンシャル）を評価することは，計画的かつ高効率のシステムの設計や開発に大いに貢献する．そのためにも，評価手法の確立と共に必要な地質や地下水情報の整備·データベース化が急がれるべきである．これらのデータベースは，地中熱ポテンシャルの評価のみならず，地中熱利用システムの増加に伴う地下環境への影響評価のためにも活用できると考えられ，将来に渡って環境に負荷を与えない，持続可能なシステムの確立に大いに貢献すると思われる．