風力発電の歴史·その13～ベッツ係数の歴史的検証とランチエスター·ベッツ係数の提案

摘要

この「風力発電の歴史」の連載も最終回を迎えることになった．21世紀に入り，エネルギー資源の有限性や環境問題がますます顕在化し，無尽蔵で環境負荷の小さな再生可能エネルギーに対する期待が高まっている．このうち特に，風力発電は完全に実用段階に達しており，系統連系方式の大規模発電が国内外の多くの好風況地域に設置されている．2011 年現在，全世界で17万台を超える大型風車が回り，その設備容量は2億kWを上回っている。この風車理論の基礎をなす概念として，風車の研究者や開発技術者のみならず，風力利用をこ関心のある人々の間で最もよく知られている重要な無次元量がベッツ係数である．これは風の保有するエネルギーから風車により有効パワーとして取り出せる理論的最大効率を示すものである．本稿では，このベッツ係数の誘導について前後の時代背景を含めた検証を行ない，ベッツ係数は本来「ランチェスター·ベッツ係数」とすべきであるという重要な提言を行っている．