賃金水準だけでの判断は禁物

摘要

アジアに進出したある日系企業関係者に、同地の労働者の質について聞いたところ、「勤勉で優秀」という言葉が返ってきた。厳しい評価が返ってくるだろうとの当方の予想は、しばしば外れることがある。権利意識の向上や離職の増加など、アジアに進出した企業にとって現地労働力事情には扱い難い問題が顕在化する一方、日常業務を朴とつにこなし、向上心や向学心が高い、といった積極的な評価を抱く日本人駐在員は多い。日本との比較のみでアジアの労働力を評価すると、現地で起きている問題の本質を見失う。企業や投資家のアジアに対する見方が、「世界の工場」から「世界の市場」へと変容する中、賃金や制度に表れる数値だけではなく、地域特性に応じた判断が求められよう。