先進安全自動車と光学技術：先進運転支援技術の現状と展望

摘要

近年，交通事故を未然に防ぐ予防安全技術(Active Safety)は高度道路交通システム(Intelligent Transport Systems, ITS)プロジェクトの一環として盛んに開発が進められている。 中でも，先進安全自動車(Advanced Safety Vehicle, ASV)の技術開発として，自動車の運動制御とドライバの運転行動を支援するシステムがある。自動車の運動制御は，自動車の「走る，止まる，曲がる」性能を高める制御技術であり，ABS，トラクションコントロール，横滑り防止装置等が挙げられる。特に近年では，個々の運動制御ユニットを統合させるシャシの統合制御が注目されている。 一方，ドライバの運転を補助する運転支援システムは，ヒューマンエラーを防ぐための装置である。 通常，ドライバが一つの制御器として，視線により車両前方または周囲の状況を認知して，危険や安全性を判断して，外界情報と車両情報を常にフィードバックしながら，操舵や加減速の操作をしている。 この制御器が正常に機能していれば，何も事故は起こらない。 しかし，交通事故の大多数は人的要因，すなわち運転上の認知ミス，判断ミス，操作ミスなどのヒューマンエラーが関わっているといわれている。 したがって，有効な運転支援システムは，道路環境とドライバの運転状態に応じて，認知ミスを防ぐための情報提示，判断ミスを防ぐための警告，操作ミスを防ぐための操作介入を行う。運転支援の支援レベルは図3に示すように3段階に大別されている。 支援レベルーIは，認知の支援として，人間－自動車系に情報提示を単に追加した場合である。支援レベルーIIは，判断·操作として，危険場面と判断したときに支援するもので，警報ないし強制的に操作介入をする場合である。支援レベルーIIIは，この逆であり支援装置が常時働いていて，人間が協調的に運転し続けるか，必要に応じて介入してマニュアルモードになる場合である。しかし，それらの支援方法はいつ，どのように選択すればドライバのシステムに対する受容性が高く，また，ドライバの通常の運転行動に対して妨害にならないかの検討が必要である。 したがって，ITS技術は，これまで以上に，ドライバに対するヒューマンインタフェイスの設計が重要な要素となり，視認·操作が単純で使いやすく，かつに役に立つ運転支援システムを開発することが極めて重要な課題となる。 本稿では，交通事故を未然に防ぐための運転支援技術を以下の順に解説する。 1.視認性向上技術；2.操作支援技術；3.プリクラッシュセーフティ；4.ドライブレコーダ。