傾斜坑井を利用した流電電位法の3次元インバージョン

摘要

本論文では，傾斜坑井を考慮した流電電位法データの3次元解析のため，任意形状の線電流源による理論電位と見掛比抵抗の理論式を導き，これらの理論式を組み込んだ3次元フォワードプログラムおよび3次元インバージョンプログラムを開発した。 フォワードプログラムで数値データを作成し，そのデータを用いて3次元インバージョンを実施した結果，傾斜井を考慮に入れて3次元インバージョンを行なうことによって，従来の垂直井と仮定した解析結果に比較して，より良好な解析結果を得ることができた。 実際には石油井および地熱井の多くが傾斜井であることを考えれば，本論文で提案した坑井の傾斜を考慮したデータ解析法を使用することによって，流電電位法データの解析精度は飛躍的に向上するものと期待できる。 しかし，本研究で開発した3次元インバージョンプログラムは，計算の高速性を重視したため，フォワードモデリングとヤコピアンの計算を近似的に行なっている。 そのため，3次元インバージョンにより再構成された比抵抗分布は，実際の比抵抗異常体の位置をほぼ再現できているものの，比抵抗コントラストが実際より小さく再現される等の問題点も明らかになった。 今後は，より精度の高い解析を行なうために，地形効果を評価できる有限要素法によるフォワードモデリングを組み込み，比抵抗値の反復改良ができる3次元インバージョンプログラムの開発を行なう予定である。