四元数信号表現によるスペクトル解析と楕円運動の概念に基づく三次元計測信号の評価指標

摘要

ポンプや発電設備に使われている機械的な回転部分の磨耗や故障を診断するシステムでは，加速度や動的変位の計測により対象部位の振動をスペクトル解析して振動波形の特徴変化や異常を検出する方法が汎用的手段として利用されている．こうしたシステムでは実際の計測に単軸のセンサを用いる場合が多い．複数の計測信号を同時処理する評価診断システムもあるが，その目的は多点同時計測による作業時間の短縮，平面上の欠陥位置ないし部材内の深さ方向といった位置情報の抽出や微弱振動の検出である．したがって，同一世置での振動現象を表わす時系列信号の処理としては，一次元の振動スペクトル解析を基本としてきた．これに対し，同一位置で計測された三ないし二次元計測信号を解析し評価する方法として，小相らによる，対象部位の三次元的挙動を三軸の接触型センサにより計測し楕円テンプレートを用いて表示する方法や，Goldman，Bentlyらによる，フルスペクトルを用いた解析法がある．これらの方法はいずれも回転機械の故障診断を目的として，多次元的な振動を把握するため，従来ほとんど活用されていなかった多軸センサの各軸間の位相情報に目を向けたものである．