高時間分解能分析法を用いた海洋表層における揮発性有機化合物に関する研究

摘要

揮発性有機化合物（volatile organic compounds，VOCs）は大気中においてオキシダントや二次有機エアロゾルなどの重要な生成源の一つであり，大気化学反応系において重要な役割を果たすことが知られている（Donahue and Prinn，1990；Singh et al．，1995）。VOCには非メタン炭化水素（アルカン·アルケン·芳香族炭化水素など），合酸素VOC（アルコール·アルデヒド·ケトンなど），合硫黄VOC（硫化ジメチル（dimethyl sulfide，DMS·メタンチオールなど）などが含まれる。VOCは人為起源のものだけでなく，自然起源のものも多くある。特に非メタン炭化水素であるイソプレンやテルペンは陸上植物からの放出が多く，IPCC（気候変動に関する政府間パネル）レポートによると，陸上植物由来のVOC放出量は化石燃料由来（161TgC／年）よりも多い377TgC／年とされている（Ehhalt and Prather，2001）。