機械室レスエレベーターの据付工法

摘要

機械室レスエレベーターは，従来機械室内にあった巻上機や制御盤を昇降路の中に納め，機械室を不要とした省スペース形のエレベーターである。 機械室レス化や省スペース化は，エレベーターの据付工事にとって足場の確保や狭窄（きょうさく）した作業空間での安全性について多くの課題を提示した。 機械室レスエレベーターの据付工事は，上記の課題を解決し，製品の持つ特長を損なうことなく，安全に短い工期で据え付けることが要求された。 機械室レスエレベーターの据付工法の主な特長を以下に述べる。 （1）据付工法は，据付時の安全性，工期，据付コストを勘案し，エレベーター機器を据付時の移動作業床として多用できる足場なし工法を採用した。（2）機器の昇降路内揚垂や搬入に用いる揚重機の仮設は，エレベーターの最上階乗り場から簡単に着脱ができる組立式の仮設足場を用いてできるようにした。（3）昇降路頂部付近に設置するエレベーターロープの綱止め，返し車等は，昇降路頂部に仮設した揚重ビームと専用吊具（つりぐ）の組合わせで仮設保持ができるようにした。 （4）エレベーターの水平方向位置の基準となる乗り場敷居前端やかご·おもりレールの設置位置は，昇降路頂部の狭い場所でも組立て可能な位置出しゲージを用いて決められるようにした。 （5）移動作業床と昇降路頂部，又はピット底部の間にできる作業空間の安全距離確保は，移動作業床の行き過ぎ防止を仮設スイッチとカムからなる第1阻止手段と，ピットに仮設したストッパによる第2阻止手段の二重系で行った。